はがねのようせい

う~ん。私のそばには妖精がいて。

妖精と動物園 その1

妖精と公園を歩く。

太陽が出ていて、風が凪いでいた。

 

ここのところ、ちゃんと机に向かうことの出来ている私は、意外と毎日をキチンと過ごしているのです。

まあ、そう思っているのはきっと自分だけで、社会から見ればあからさまにドロップアウトなのでしょうけれど、私の生き方に対する自分の評価というものは十分に合格点なのです。

ハーさんも「それでいいじゃん」と言ってくれているし。

人がどう思おうと、とにかく私は今日も午前中からパソコンに向かって物語を書いています。

書いたものが褒められたらいいなぁ、とか、天才!とか言ってもらえる様になんていうスケベエ心なるべく持たないように。

だってスケベエ心はイヤらしいですもんね。ましてやそれを人に知られたら恥ずかしい。

私は顔に出るし。

「でもなぁ」と、そこで私はキーボードをたたくのを止めて考えてしまう。

生き物にはスケベエ心は必要だしなぁ。スケベエな事思っちゃうのもしょうがないかぁ。と。

近頃、開き直っている私なのでした。

ハーさんの影響も少しあるのかな。

いいか悪いかはよく分からない。

 

そのままひと段落していた私が伸びをすると、後ろから声が聞こえました。

「いいか悪いかなんて、そんな決めつけなくていいじゃんか」

ハーさんだ。。

あれ?今声に出して言ったっけ?と不思議に思って振り返ると、私のスマホをいじくっているハーさんが立っていました。

友達の少ない私にはめったに電話もかかってこないし、SNSなんかもやっていないので、スマホにプライベートが一切ない私はそれを誰かにいじられても慌てる必要がまったく無い。

「これなに」

写真のアプリを開いたハーさんが、一枚の画像を私に見せつけます。

そこに映っていたのは、顔の大きいモジャモジャした変な生き物。

「あー?」

振り返って私はその写真を見つめる。何だっけ。

正面を向いてこっちを見つめる毛むくじゃらの大きな動物。水に浸かっているぞ。

ハーさんの手からスマホを奪い取り、その前後の写真を見てみます。

思い出しました。

動物園。カピバラ

何年か前、始めたスマホを持った私は、そのカメラ機能を使ってみたくて、被写体を探していたんだ。自撮りなんかするつもりは一切なかったので、それなら、と家からそう遠くない動物園に向かったのです。

動物たちはたくさんいたはずなのに、カピバラさんの写真しかない。

他にもサルやアライグマなどがいて、それらを撮影した記憶はあるのだけれど、消してしまったのかな。

とにかく何故かカピバラさんだけはスマホの中に居座っている。

スマホを私に渡したハーさんが言います。

「なんなのよ、それ」

カピバラ。動物園」

カピバラ?そう言う名前なの?なんか気持ち悪いね」

「でっかいネズミらしいよ」

「げ」

 

でっかいネズミと聞いて、ハーさんの目がキラキラしだしたぞ。

そう、実際のその目、その顔は靄に包まれたように、私にはよく見えないのだけれど、確かにキラキラしだしたのです。

あちゃー。言いだすぞ、こいつ。

机に向き直った私の背中にハーさんのワクワクした声が響きます。

「よし!見に行こう!スグ行こう!」

「行かない」と言っても聞くようなハーさんではありません。

「2時間待って」

断り切れなかった私が悪いのでしょうか。

30分と待たず、私たちは家を出ていたのでした。

 

うるせえんだよ。ハーさんは。

何かが気になると、少しも待つことが出来やしない。

今日はせっかくいい調子で小説を書いていたのに、人の都合はまったく無視して「早く早く」とせかしてきやがる。

あー、もう。まったく。

私はそんな環境でモノを書けるほどの才能は無いのです。

 

軽自動車にハーさんを乗せて、私達は動物園へと向かいました。

ハーさんはギターを抱えて来た。

止まった交差点で、私はハーさんの顔を睨んで言ってやる。

「迷惑になるだろう?動物園でそんなの掻き鳴らしたら」

「持ってるだけならいいんでしょ」

顔を反らしたハーさんがそう言いました。

そんな訳あるはずない。絶対掻き鳴らすに決まっている。

点灯している信号の赤を見つめて私はそう思うのです。

 

動物園のある大きな公園に着きました。

平日の昼間、駐車場はさすがにガラガラ。

ここから10分位歩くのです。

「チョコレート」

ハーさんが売店を見て呟いた。

そうだ。お昼食べていない。

私は売店で板チョコとアンパンとサラダあられを買いました。

おー。ちょっとワクワクしてきたぞ。遠足だ。

 

太陽が私とハーさんを照らしている。

冬は終わったのかな。

柔らかい風。

私の春一番は今、私の頬にあたるこの風にしよう。

 

その古い、昔ながらの動物園は規模も小さく、狭い檻の中に居る動物たちが大半です。

それでもゾウさんがいて、檻に入り切らないという理由だけで外に出してもらっている様な巨体は、入った正面、私たちを迎えてくれた。

「あ、ウンコ!」

ハーさんが叫んだ。

私は呆れる。

なぜ最初にウンコを見つける?

 

「ウンコ、ウンコ、ウンコ!」

ハーさんがウンコを数えている。

ソウさんが「そう、そう、ウンコ。ウン、ウンコ」と長い鼻をブオンと振った。

 

 

◎お読みいただきありがとうございました。